雑俳の風景―17

溝口 浩

隠れ里流し温泉けむる雪解川

 

草津温泉の湯畑から下って熱帯園の方向に進むと小さな川を渡ります。雪空に冷え切った川の水に旅館から放出された大量のかけ流しの湯が注ぎ込まれると、もうもうとした湯気が立ち込める。これがなんとも面白い。

 

去年の1月、家路に向かうこの日東京は大雪で交通機関は大混乱、草津のあたりはいつもの事だからバスも列車も動くけれど特急草津は高崎止まりにされたから大変。新幹線は動いているという。仮に高崎線が動いていても上野まで2時間近くかかる。まして雪に弱い東京に近づけば動けなくなるかもしれず、動いても3時間はかかるかも。そのうえに座れる保証はない。八十歳間近の身に異変が起こっても困る。ここは新幹線しかないと決めました。

新幹線の改札口の自動券売機にかなりの人が並んでいる。これは割り込むわけにはいきません。「窓口が空いてるわよ」の奥方の声に隣を見ると発券機の前に座った駅員が所在無げに券売機の一点を見据えています。

この窓口でチケットが買えるのか迷ったが、聞くと買えるという。しかも10分後に到着する列車の座席がわずかながら残っている。「三人掛けの真ん中の席で前後が空いてますがいいですか」もちろん嫌う理由も無い。助かった。天は我の味方であった。積善の家に余慶あり~か。

つづく