雑俳の風景―13

溝口 浩

寒月や二胡弾く人の指細き

 

50年も前の話ですが仕事で香港に駐在していました。香港の夏は湿度の高いのが特徴で、そんな時しばし逃避出来るのが舟遊び。九竜のちょっとした入江から櫓漕ぎの小舟に乗って海に漕ぎ出します。料金は10香港ドルから値切って5香港ドルで決まり。当時のレートで300円。沖に出ると果物などの売り船が寄ってきます。当時日本では食べられなかった竜眼~ライチ、オレンジなどを口にしているとやってくるのが楽隊の船、日本人と見れば決まって「支那の夜」。胡弓の音が侘しげに水面を流れます。

 

突然ですが歌舞伎の話。壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)という芝居の一場面で阿古屋という花魁が、夫の行方を思いながら一心不乱に奏でる三曲の音色 。白洲に引かれても、少しもたじろがず琴、三味線、胡弓を奏でます。この三種の楽器を奏でることが出来るのは坂東玉三郎だけなのですが芸を絶やさない為に若手女形二人を指名して引き継ごうとしています。

この玉三郎の胡弓を弾く姿の艶やかなこと、いつまで観れるでしょうか。

胡弓と二胡は似て非なるものですが私の中のイメージではひとつになっているのです。

…つづく