雑俳の風景―7

溝口 浩

 

宿坊の終ひ湯に入り虎落笛

数年前まで歴史ある婦人消費者団体に関わっていました。その活動の中で「森林ボランティア」は重要な活動のひとつでしたが、また楽しいものでもありました。春は植樹、夏は下草刈、秋は小枝落しと、村の人たちの指示に従いながら数十人が作業を行います。そして日の暮れとともに村役場の人たちとの懇親会。山形県の月山ではかって「マタギ」であった人と隣り合わせになり月の輪熊の狩りの様子などくわしく教えてもらいました。

月山は湯殿山、羽黒山とともに出羽三山のひとつに数えられ、修験者の山岳信仰の山として知られ、山頂には月山神社が鎮座し、多くの修験者や参拝者が訪れます。そして彼らが泊まるのが宿坊。我々も宿坊に泊まります。

修験者は精進料理などをいただくようですが、俗身の我々は村の人々との交流で山の幸と地元のお酒をいただいて夜も更け、終い湯に身を沈めると虎落笛が聞こえてきます。眼をつむるとほろ酔いの右脳が次々と思いを提供してきます。睡魔に捕らわれる前に床に就かねば。

 

虎落笛(もがりぶえ)とは冬の烈風が柵や竹垣などに吹き付け笛のような音を発するのをいう。

…つづく