雑俳の風景―4

溝口 浩

割り箸の吉野杉の香冷奴

 

下関に本拠を置く俳句同人「其桃」二十九年二月号の現代俳句鑑賞の中で   吉村保亮さんにこの句を取り上げていただきました。氏のコメント、

和料理の香りは洋料理に比べおしなべて控えめで奥床しい。例えば揚句の冷奴のように豆腐の淡白な香りと割り箸の吉野杉の仄かな香りは良く調和する。和料理の世界は奥深い。

遠く離れた下関の俳人が、もちろん私の属する「春嶺」の俳誌をご覧になって偶然この句を拾ってくださったのしょうが嬉しいことです。

吉野杉の間伐材を使った高級割り箸は上品な香りと美しいツヤがあり、婚礼などのおもてなしや祝いの場などで使われます。従来杉の中央部は割り箸に不適格であるため、割り箸には杉の外側だけを使用してきました。しかし、環境のことを考えると杉全体のことを考えなければなりません。そこで中央部分でも割り箸に適している部分は割り箸に、適していない部分は他の木工品に使うことで、杉全体を使い尽くすように考え方が変わってきたようです。

豆腐料理の中で何を最高とするかと問われれば、迷うことなく冷奴。これをほのかな吉野杉の香りとともに味わえば極上の刻。

…つづく