敗戦前後の記憶-25

溝口 浩

 

焼け跡と闇市の東京-6

 

刑部先生は隣の円融寺の境内に子供たちを連れ出して釈迦堂の縁に座らせ、いろんな話をしてくれた。

 

昔の話だがね、なんの苦しみもなく極楽往生させてくれるというありがたいお坊さんが円融寺に現れたという噂はあっというまに近郷一帯に広まり、この寺には連日極楽往生を願う老人たちが多額の喜捨の金をもってやってきた。

噂によると釈迦堂に入った信者と坊さんの読経の声がしばらく続くうち合掌をしたままの信者の遺体が運び出されてくるという。

この話に疑問を持った武士の一人が極楽往生を願い出る。案内された釈迦堂の中には花を敷き詰めた座が設けてあり、ここに座るよう指示をされる。このとき武士は隠し持った厚い板切れを尻の下に敷いてその時を待った。

読経が最高潮に達したとき尻を鋭く突かれる衝撃に板切れを持ち上げてみると槍が深く刺さっていた。悪徳坊主一味は縁の下にひそみ、尻の位置に空けた穴から槍で刺し殺していたのだ。

大立ち廻りの末武士が悪徳坊主どもを退治したのはいうまでもない。

…つづく