つららの坊や-3

溝口 浩

 

朝も早くから用意された赤い炎と鉄瓶のお茶を喫しながら、至福の刻を楽しんでいた妻が何気なく見回した部屋の一隅、書架に見つけた青木新門さんの童話、2日前の出来事からの思わぬ出会いに高ぶる気持ちを抑えて手に取ったのが「つららの坊や」、だったのです。そしてこの絵本に挿入されている雪やつららの写真は、この家の亭主、池端 滋さんの作品でした。こんなことから池端さんと新門さんとが古い友人であること、義弟と新門さんとの縁などがお互いの知るところとなるうちに話はいつか「つららの坊や」に込められた新門さんの死生観に繋がっていったのです。

それはそれは寒い朝、谷あいの小さな村の合掌造りの軒先でピカっと光って生まれたつららの坊やは、少しずつ大きくなりながら雀やねずみ、とちの木のおじいちゃん達との交流を通じて、生きていることと居なくなることの意味を教えられてゆきます。そしてよく晴れたある日、つららの坊やは光の中に消えました。

映画「おくりびと」の原作者となることを脚本の死生観が違うことを理由に拒否した青木新門さんの死生観がこの童話の中で暖かく語られています。人との繋がり、出会い、廻りゆく命、読み返すたびに新たな発見が私の老脳を刺激して童脳へと誘ってくれるようです。

おわり