草津温泉異聞―5

溝口 浩

高崎駅の混乱

 

長野原草津口駅の待合室にのんびり座っていると容易ならないアナウンスが聞こえてきた。なんでも特急草津は大雪の為高崎駅で運行を取りやめる、そこから先は在来線を使って勝手に帰ってくれといっているらしい。更に発車まで30分あるが列車はホームに入っているので乗車しなさいとまで言っている。

こんな時には人間はだいたいが従順になるもので不安げな乗客たちがもくもくとホームに連なって行く。高崎からどうなるのか、駅員だってわかりはしないのだから誰も尋ねもしない。

30分がえらく長い時間に思えるうちに汽車は動き出した。快調に時刻通り走っている。なんだ、動くじゃないか、この調子なら高崎の先、もしかしたら上野まで行くかもしれない、能天気にも楽観論が頭をよぎる。別の雲が湧いてくる、高崎に一泊かも。楽史会の講演が明後日でよかった。

…つづく