草津温泉異聞―2

溝口 浩

旅の小姐

 

小姐、広東語で「しゅうちぇ」という。未婚の女性のこと。若い女性が坂を登ってきた。足湯を見つけでほっとしたように我々夫婦の向かい側に陣を取る。

「かなりぬるいですよ」と声をかけると「私にほんごがわからないんです」そうかそうか中国の人だなと納得。私よりは英語が達者な奥方が話し始めた。どうやら深圳から来たようでなんと40日の行程、寒い日本に驚いている。これから軽井沢に行くというので、もっと寒くなるよというと苦笑いしている。

私が香港に住んでいたことがあるという話になって、何年前かというので50年前だと返せばとんでもない前ですねとのけ反る。彼女が生きたのがその半分ぐらいだから無理もない。

 

若い4人の男連れが入ってきた。いま地蔵の湯に入ってきたばかりだという。「地蔵の湯の方は熱さもしっかりしていて、いい湯でしたよ。」

足湯から出てハンカチで足を拭こうとすると男連れの一人が持参のタオルを差し出して「お使いになりませんか」、ありがたい事だが丁重にご辞退した。

いい若者たちである。

…つづく