草津温泉異聞―7

溝口 浩

僥倖

高崎駅のホームは東京方面に向かう人で溢れかえっていた。こりゃ大変だと思ったが救いの神が現れた。なんと列車の出口のすぐ前に階段があって「どうぞどうぞ」と口を開けている、僥倖と言わずして何と言えよう。階段を駆け登る、奥方も遅れじと就いてくる。新幹線方向に大勢の人が固まっている、前に出てみると駅員がチケットに「事故」の印を押している。横からチケットを差し出すと押してくれた。年寄りじゃしょうがないと思ったのか順番を乱した私にクレームをつける人もいない。この印が後で役に立つ。本来なら高崎以遠は使えなくなった乗車券が有効と認められたのである。

 

新幹線の改札口の自動販売機にかなりの人が並んでいる。これは割り込むわけにはいかない。

「窓口が空いてるわよ」の奥方の声に隣を見ると発券機の前に座った駅員が所在無げに券売機の一点を見据えている。

この窓口でチケットが買えるのか迷ったが、聞くと買えるという。しかも10分後に到着する列車の座席がわずかながら残っている。

「三人掛けの真ん中の席で前後が空いてますがいいですか」もちろん嫌う理由も無い。助かった。天は我の味方であった。

新幹線はほぼ定刻に東京駅にすべりこんだ。そのご東京駅の乗り換えに難渋したがたいしたことでもなく、当初の予定に一時間遅れで我が家にたどり着いた。発泡酒での雪見酒が美味い。

おわり