草津温泉異聞―6

溝口 浩

決断と即行

車掌が回ってきた。新幹線は動いているという。仮に高崎線が動いていても上野まで2時間近くかかる。まして雪に弱い東京に近づけば動けなくなるかもしれず、動いても3時間はかかるかも。そのうえに座れる保証はない。八十歳間近の身に異変が起こっても困る。ここは新幹線しかないと決めた。

特急草津は予定通りの時間に高崎に着いた。着いたといってもホームに着いたのではない。前に列車が詰まっているのか何十メートルか手前に停まったまま動かない。我々も含めてほとんどの人が出口近くに移動している。旅慣れた風の若者が「いつ動くかわかりませんよ、座っていた方がいいですよ」と声をかけてくれる。それもそうだ、先々の事を考えれば座っておいたほうがいい。

新幹線に決めた以上窓口に早く行きたい、無理だとは思うが座席を確保したいのはやまやまである。新幹線だって途中でのろのろ運転や一時停止があるかもしれない、立ん坊はご勘弁願いたい。

30分は経ったと思われる頃列車はごとりと動き出した。

…つづく